No.48 採録・撮影者◎川崎ぶら 写機◎EF 被写機◎TPs30
窪之内英策『ワタナベ』
スピリッツ1992年1月1〜6日号掲載分より、ワタナベの警句。

 バブル経済を経験した日本人はこの頃、まさにその幻の好景気が破裂するところを目撃していた。自分が儲けているわけでもない若者がクレジットカードのローンを頼りに見栄を張り享楽に勤しんでいたのは、つい前年までのことだ。漠然たる終末観のようなものを人々は抱き、自民党は戦後最大級の危機を迎えたが、庶民の生活そのものは不気味ささえ覚える平穏の中にあった。
 そんな日本に、どこだか遠い宇宙にあるカナーイ星から「ホームステイをしたくて」やってきたのがワタナベだった。いわば宇宙人である。ワタナベもそのことを特に隠さずホストファミリーを探すが、地球人は彼のことを、ちょっと風変わりな東洋系外国人ぐらいにしか思わない。しかし人懐こい性格から地球の生活にも慣れ、日本に馴染むと、ワタナベはどうしても理解できない難問に突き当たった。日々間接的に環境を破壊し続けているのに、なぜ地球人はその生活を省みることなく、何の心配もしていないのか。

 別に、環境保護を訴えるための作品ではありません。リアルな日本庶民の生活意識や、美点や、度し難い愚かさを、地球の外から来た素朴でドン臭い人の眼から見たらどう映るか、という設定の、ファンタジックでドタバタあり涙あり謎めく展開ありの、コメディ作品でした。
   
『ワタナベ』
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