No.52 採録・撮影者◎川崎ぶら 被写背◎爽やかな若者を呪い続けて20年の当頁担当編集
吉田聡『走れ!!天馬』
スピリッツ1996年9月9日掲載分より、斎藤のセリフ。
 本作の主人公は、九州から東京の高校へ転入してきた柔道青年・天馬。途方もない巨根を股間に保持するが、そのドングリ眼は常に純粋な光を湛え、柔道の実力も相当なものらしいと伝えられている。
 そして天馬が東京で世話になる家の娘・聖子は、天馬が編入する同じ高校に通いながらグラビアアイドルとしても活躍する美少女で、力自慢揃いの運動部員たちは全員が熱烈な聖子ファンである。天馬は転入当日にして早速、暴力的な嫉妬の嵐に見舞われ、さらに柔道部においては部長の斎藤の地位を脅かすか、とも騒がれ、みるみる注目を集める存在になってしまう。
 一方、全運動部でも随一の猛者と目されている柔道部部長の斎藤は、自らの学内の地位とプライドを守り通すため天馬と雌雄を決さねばならないと思いながら、直接対決がある前にその実力を見極めようと珍妙な変装をし、己の存在を隠す。
 この結果「部長が留守」となった柔道部へは他校からの道場破りが現れる。これを迎え撃つことになったのは天馬だった。応援に駆けつける聖子。試合の激しさを目の当たりにして、聖子の声援も熱を帯びる。
 無様に変装し物陰から試合を見ていた斎藤は、天馬を声の限り応援する聖子を見ながら心をグサグサと抉られる。本来なら誰より強いはずの自分。そして誰よりも聖子を思ってきた自分。
 斎藤はその場へ出てゆけない自分を恥じながら、祈るように思う。
 傲慢なくせに卑怯で小心なところもある大男の斎藤ですが、天真爛漫な天馬よりも作者にとってはむしろ愛着があったようにも読めた人物でした。同情すべき展開は、この後さらに続くのですが……。
   
[走れ!!天馬]
BC版単行本では
第1集に所収。
魂語録トップへ戻る
採録集トップへ


このサーバー上のデータの著作権はすべて小学館が保有します。無断複製・転載・放送等は禁じます。
このサイト、およびスピリッツ本誌に関するお問い合わせはこちらまでお願いします。